まだ壁画を描き始める前のこと。その日は午前中アトリエで作業をして午後にアートセンターへ立ち寄ると、センターのスタッフが私を見つけて白いカードの束を渡してくれた。
それは“Pour Ayako”と描かれた帯でまとめられた20枚以上の子ども達の絵だった。

 

 

驚いて “これはどこの子ども達が描いてくれたの? ”と聞くと、“あなたが壁画を描いているところを見に今朝子ども達が小学校から来ていたのよ、みんなAyakoはどこ?って探していたわよ。” と言われて胸が痛くなった。

 

トルシーに来て間もない頃、センターの講師で子ども達とワークショップを行っているアーティストに来月の14日に君が壁画を描いているところに子ども達を連れて来てもいい?と聞かれ、私は 一応14日から壁画を描き始める予定だけどまだ確定してなくてスケジュールは変わるかもしれない、と答えた。

 

OK,分かった。と会話をして終わり、それからそのアーティストと会う機会がなく私も制作とレジデンス関連のやり取りに追われこの会話のことを忘れていた。そして壁画制作開始は諸々の事情で後ろ倒しになった。

センターに来ても私がいなかったので子ども達は私へ送るカードを描くことにしたらしい。

子ども達をがっかりさせてしまった事実にその日はとても落ち込んだ。取り急ぎそのアーティストにお詫びのメールを送り、子ども達にも絵のお礼をしなければと思い、持ってきているポストカードに “素敵な絵をありがとう!” と日本語とフランス語でメッセージを24人分書いてアーティストへ預けた。

 

 

 

 

 

それから一週間後そのアーティストがこの前のポストカードを子ども達に渡したらとても喜んでいたことを教えてくれ、三角形の大きなカードを渡してくれた。

 

子ども達の名前と“Merci Ayako”と書かれたそれを見てとても嬉しかったし安心した。
失敗したら、謝ればいい。という当たり前のことをしみじみと感じた出来事だった。

 

 

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