93日からの仁摩サンドミュージアムでの個展、お陰様で好評開催中です。

この個展が決まってから開催まで公私共にとても色々とありました。

お話を頂いたのは昨年の夏前。ちょうど第二子を妊娠した直後で、果たして妊娠中に新作を作れるのか、産後間もない身で育児しながら島根までの作品運送や搬入出はどうするのかなど不安点がたくさんあり、お話を受けるかかなり悩みました。

悩んだ末今まで心血を注いだ大作達を悠々と展示できる機会はとても有難く、新作はこの展覧会のための描き下ろし一点に集中すれば見応えある展示にできるのではないかと思えたので引き受けることにしました。

そして会期も決まり可能な限り余裕のあるスケジュールを組んだのですが、妊娠中の体の不調や家族の仕事に伴う急な引っ越しなどで嘘のように余裕はなくなり、無事出産してからも僅かな時間を紡ぎ続け制作を続けていました。

 

新作の琴ヶ浜の夕焼け作品は本当なら私自身が現地まで行きちゃんと夕焼けを見た上で制作したかったのですがコロナ禍の妊婦の遠方旅行はリスクが高すぎて断念せざるおえず、代わりに家族に取材旅行に行ってもらい琴ヶ浜の夕焼けの写真を沢山撮影してもらったものを元に制作しました。

山際や島のシルエットなどは現地の人が見れば分かる程の再現を目指しました。

 

雲の表情や色彩は私が見たい夕焼けのイメージなので虚構と現実が入り混じった作品となっています。

雲の形や彩度などどこまでリアルに沿い、どこから飛躍させるかで何度も揺れ迷い何度も描き直しました。

 

もうすぐ完全しそうと思ったところから、

ほんの少しマゼンタを足したいと思った結果全体を描き直すことになったり。

その結果搬入直前まで描いている本人以外は分からないような細かい加筆をしていました。

 

この作品を描いている間コロナ禍での育児をしながらの妊活、妊娠、出産という色々不安の多い状況を過ごし、自分のお腹の中で別の命が動いている感覚、その命がメリメリと私の体を破壊しながら産まれ出ようとしてくるとても神秘的な体験をしました。

 

その後もこれからの残りの人生について考える機会が多々あり、生涯アーティストとして作品を作り続けることは目標だけど事故や病気で急に描けなくなるのは10年後かもしれないし明日かもしれない。とひしひし感じるようになりました。

だからこそ一つ一つの作品や展示に対して悔いのないよう心から丁寧に向き合いたいと思います。

 

今回の個展タイトル「色めく命、生きる色彩」はこれらの経験、考えを経てストレートに「命」と「生きること」を私の色彩で表現したいと思ったので名付けました。

 

 

搬入はミュージアムスタッフの方々数名に手伝って頂き何とか大作全て陳列することができました。

この規模の個展を次いつできるのかも分かりません(勿論やりたいしまたできるよう頑張ります)ので、1人でも多くの人に観てもらいたいです。

 

搬入日は朝空港からそのままタクシーでミュージアムへ行き時間ギリギリまで作業してそのまま空港へ帰ったのでどこにも行けませんでしたが、帰りの運転手さんが空港へ向かう途中で10分だけ稲佐の浜に寄ってくれました。

ひとときの夏の終わりを感じられました。