3月の個展で発表した新作の木工作品4点について解説したいと思います。

 

「記憶 / 山桜 東北100年」H35×W32×D5cm

木にアクリル(木材加工:laboratory 株式会社)

今回個展をやるにあたりディレクターの石橋さんから新しいことに取り組んでほしい旨を伝えて頂き、その中で木工・漆器作家の田中英一さんをご紹介頂き工房まで伺い様々な木材を拝見しご相談させて頂いた上で作品用の木材を加工して頂きました。

木材を拝見して こんなに一つ一つに個性や背景があるのかと驚きました。野外にストックしてある片手に収まるほどの小さい木材一つにも木の種類、樹齢、産地が記録されていて、こんな小さい木片も東北の厳しい寒さの中で100年も生き抜いてきたのか、などと想像が広がっていくのです。今まで木材に対してこんな風に思いを巡らすこともなかったのでとても新鮮に感じました。

同時に私が表面に絵を描かなくてももうすでに十分完結した作品なのではないか、とも思えてしまいどう制作していくかなかなか考えがまとまりませんでした。

色々考えた末、その木がどんな花を咲かせていたのか触れながらイメージしてもう一度その花を咲かせる。というコンセプトが1番しっくり来るように思いました。そして奇をてらわずまっすぐ木材と向き合い木の中に埋まっている記憶を掘り出すイメージで描き始めました。作品に昇華するまでなかなか難航しましたが何とか描きたいものを表現することができました。

タイトルは木の出自データをそのまま付けました。

こちらの作品は下記リンクの白白庵オンラインショップで購入することができます。是非ご覧ください。

https://pakupakuan.shop/collections/藤本絢子紅爐一点雪/products/藤本絢子記憶山桜東北100-fmapn026

 

 

FurnaceH110×W12×D6cm木にアクリル(木材加工:laboratory 株式会社)

 

この木材は樹齢130年の岩手県産の山桜です。長さが1メートルもあり何を描くか考えていたところ、白白庵の茶室の床の間に飾るとピッタリなサイズではと助言を頂きました。

そして個展タイトルの「紅爐一点雪」という禅語も掛け軸で茶室に飾られているとのことだったので、このタイトルを具現化したような作品にして床の間に展示する想定で描き始めました。

始めはもっと具象的なモチーフも描いていましたが上手くいかず難航し追い詰められた末に、もう描きたいように描こう!と開き直り、頭には速水御舟の演舞を思い描き、普段使いたくても使わないようにしていた蛍光色も使い、久々に手が動くままに楽しく描きました。(蛍光色は発色が鮮やかな反面他の絵具に比べて退色しやすいとされています。対策としてUVカット効果のある保護剤を2度塗りしました。)

最終的には茶室の床の間ではなく個展会場へ階段を登って始めに目に飛び込む場所に展示しましたが、新しい表現のお披露目としていい場所に展示できたと思います。

タイトルの「Furnace」とは紅爐の意味です。

こちらの作品も下記リンクの白白庵オンラインショップで購入することができます。是非ご覧ください。

https://pakupakuan.shop/collections/藤本絢子紅爐一点雪/products/藤本絢子-furnace-fmapn024

 

 

「記憶 / ウォールナット」幅40cm 48cm 50cm  木にアクリル(木材加工:laboratory 株式会社)2020

海外産のウォールナットを使用、原産地と樹齢は不明。同時進行で制作した山桜は木材に触れながらその木がどんな花を咲かせていたのかイメージを膨らませもう一度咲かせるというコンセプトで花を描きましたが、こちらはその木がどんな朝焼けを見てきたのかをコンセプトに描きました。

原産地が不明のため土地からイメージを広げることはできませんでしたが、ウォールナットの樹木について調べつつ、木を切るとその木がそれまで見てきた朝日が蓄積した色彩が出てきたイメージで仕上げました。

この作品はすでに売約済みです

 

 


「記憶
/ 南会津 120年」幅11cm 32cm 5cm  木にアクリル(木材加工:laboratory 株式会社) 2020

福島県南会津産の樹齢120年の栗の木を使用。「記憶 /ウォールナット」と同じく木肌に触れながらその木がどんな夕陽を見てきたのかをコンセプトに描きました。

ウォールナットは朝焼けなのに対しこちらは夕焼けで、周りの木々のシルエットを描かずに抽象的な色彩表現を目指しました。

木を切るとその木がそれまで見てきた夕陽が蓄積した色彩が染まり出てきたイメージです。

 

個展会場では同じく夕焼けのキャンバス作品と朝焼けのウォールナット作品の間に展示しました。

この作品はすでに売約済みです

 

 

今回の木工作品はこの個展がなければ生まれなかった作品達です。お力を貸して頂いた田中英一さん率いるlaboratory株式会社に心から感謝いたします。