壁画の構想を進めるのと同時にアトリエでの作品制作も進めていた。

 

自由制作だが作品は日本に持って帰るので大きなサイズは作れず、普段使っている油絵具は乾くのが遅いのでアクリル絵具と水彩画で制作することにした。

 

トルシーを散策し住民の人達と交流していく中で撮り溜めた写真やスケッチを元にアトリエに篭って作品の構想を練るがなかなか進まずに焦る。外はとてもいい天気。

 

 


トルシー到着翌日に買いに行ったブーランジェリーが数日後行くと閉店していて、一週間もしないうちに新しいブーランジェリーがオープンしていた。明日の分もたくさん買って合計7ユーロ。

 

サーモンサンドをアトリエのバルコニーで食べる。
どんなに素敵な土地に来ても日本の自宅にいても作品の産みの苦しみは変わらないなと実感する。

 

 

トルシーの公園を散策していたら池に鳩の亡骸が静かに浮かび揺らいでいた。

 

物悲しくグロテスクなものを見ているような、美しく崇高な物を見ているような何とも言えない心境になりしばらく目が離せなくなった。まるでオフィーリアのようだと思った。このインパクトを作品にしたい、と思った。

 

画用紙に水彩画でスケッチする。

 

 

 

トルシーではスズメもカラスもほぼ見ないが代わりに白と青みがかった黒の尾が長い鳥をよく見る。

調べるとそれはカササギで鳴き声がうるさく物を盗んで飛び去っていったりするのでこちらではあまり好まれない鳥とのことだったので、壁画ではカササギ以外でトルシーで印象深い白鳥やアヒルのシルエットを使うことにした。

 

 

 

 

白鳥などのスケッチ。カササギも先入観なく綺麗なフォルムと羽根の鳥だなと思っていたので何か作品にできないかなと思案する。

 

 

 

初夏のトルシーの街中は薔薇が咲き乱れていて鮮やかな薔薇越しの澄んだ青空のイメージが強くて、それだけなら日本にもあるありふれた景色だけれどとりあえず素直に描いてみようと思った。

 

 

 

壁板にキャンバス布を貼り付け特に構図を決めず描き始める。手を動かし始めるとそれまで構想段階でモヤモヤしていた気持ちがやっと少し楽になった。

 

 

 

 

レジデンス関係者に町の図書館に連れて行ってもらいこちらで流行っているCDを制作中に聴くため大量に借りる。カウンターにはポケモンや日本のゲームのキャラクターが。

 

DVDコーナーには色々な洋画に混じって大好きなカウボーイビバップの映画版が並んでいてとっさに借りた。

 

必死に考え続けていても作品という形にして外に出していないと側から見たら休んでいるように見られるのは仕方ないけどやるせない。
その分考え続けたことをドバッと作品にして出せばいいだけのことだと自分に言い聞かせる。

 

この季節のトルシーは夜10時頃に夕焼け空になる。アトリエから見た雨上がりの夕焼けがとても美しかった。

 

この時の空気感や色彩をストレートに作品にしたいと思い、新たにキャンバス布を壁板に貼り付け描き始めた。

 

 

 

同じアパートに住む男の子が天使のように可愛くだんだん私のことも覚えてくれ、ある日アートセンターから帰るとアパートの人達が中庭に集まっていて今日はこの子の2歳の誕生日なんだよと教えてくれたので、取り急ぎ私の花の作品のポストカードにお誕生日おめでとうと日本語とフランス語で書いてその子に渡すと喜んで受け取ってくれた。

 

 

 

そのやり取りなどにとても癒されたのでその子のお母さんに絵のモデルにしていいかと相談したら快諾してくださった。

 

夜は投光器を借りて制作。
壁画制作がスタートしてからはそちらにかかりきりになると思うのでそれまでにアトリエでの制作をある程度形にしなければと常に心が追われていた。

 

 

アパートのポストを開けると日本からエアメールが。

香川でお世話になった方から京都土産のお守りとお手紙。少し涙腺が緩んだ。

 

 

今できることを精一杯すればいい。焦らず急ごうと改めて自分に言い聞かせた。

 

 

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