10月15日をもって藤本絢子個展 『夏果の残りび』無事終了いたしました。この2週間で沢山の方にご来場頂き、展示空間や作品に対して色々な感想を頂けました。嬉しく思うもの、もっと精進しようと思うもの、どちらもこれからの制作の糧にしたいと思います。


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在廊できなかった時にお越し頂いた方々には直にご挨拶出来ず申し訳ございませんでした。芳名録のお名前を見て感謝しております。ご来場頂いた方々、作品をご購入頂いた方々、本当にありがとうございました。

 

約6年間芸大生時代を過ごした京都は私にとっては優しくも厳しく、愛おしくも恐い場所でした。そこで個展を行うことは他の土地とは別の緊張感がありましたが、その機会を頂けること自体がとても有り難いことだと改めて感じました。

 

この個展のお話は一年以上前から決まっていて、初夏にフランスで滞在制作をする前から個展の構想は進めていました。しかし帰国し改めてこの個展について考えた時、それまで構想していたテーマがどうもしっくりこなくなり、会期が迫った時期に大きく軌道修正することになりました。

 

久々にドロリとしたもの、仄暗いものを描きたい。

それを描くにあたり、モチーフを全て金魚に絞った展示にしても面白いかもしれないし、自分のルーツである京都でならそれをやる意義はあるかもしれない。

今まで何度か描いた黒背景の金魚を夏の夜の火の玉に見立ててメインイメージにしたい。

 

などと少しずつ新たに組み立てていきましたが個展タイトルは長い間悩み、ギャラリーへの提出締め切り直前でようやく決まりました。

夏果 という言葉は夏の終り頃を指す季語で本来はナツハテと読みますが語感の良さでゲッカに、『夏果の残り火』だと字体が何となく仰々しく感じたので 火 を び に。

夏は私の中で最も自由でいた時間、シンプルに言えば青春のメタファー。

秋を受け入れることが出来ず夏の夜を彷徨い続けるというイメージは、未だ大人になりきれず過去の自由だった時間に未練を持つ心象風景。

このメインテーマで一番始めに描き下ろしたのがDM使用作品『のこり火』

 


『のこり火』 キャンバスに油彩 73×53cm P20 2017

 

 

この作品が完成したことで今回の個展の軸を自分の中で明確にすることができました。

 

この後に『鬼火』『鬼灯』を制作。

 

『鬼火』 キャンバスに油彩 73×53cm P20 2017

 

 

『鬼灯』 キャンバスに油彩 92cm×73cm F30 2017

 

 

そして何かもっと大きなサイズのこの個展独自のものがほしいと考えた時に、数年前にいらないから作品に使ってと知人から貰い受け倉庫に保管していた古屏風を思い出し、使うなら今だと制作を決め個展約2週間前から保管倉庫に籠り一気に描き上げました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトルは『鬼火夜行』 夏の夜に得体の知れない“怪異”の往来に鉢合わせてしまったイメージ。壁画を描く要領で描いては離れ全体のバランスを見てを繰り返し描き進めました。


 

 

 

 

この個展がなければ生まれなかった作品を生み出せて満足でした。また機会があれば屏風絵も描きたいです。

 

 

 

これらを制作しながらこの個展のための小さい円パネルのシリーズも制作しました。


このシリーズは一つずつ夏の季語の植物名を付けています。
金魚作品はサイズが可愛いくなるに従い表情も可愛くなることが多いです。
等身大に近づくと金魚の持つ愛玩動物というイメージが大きく出てくるように思います。

 

 

『残りびの玉  百日紅』 円パネルにアクリル絵具 直径10cm 2017

 

 

『残りびの玉  浮葉』 円パネルにアクリル絵具 直径10cm 2017

 

 

『残りびの玉  金雀枝』 円パネルにアクリル絵具 直径12cm 2017

 

 

『残りびの玉  沙羅の花』 円パネルにアクリル絵具 直径15cm 2017

 

 


9作品を同時進行で仕上げていく中で縁日の金魚掬いのポイから覗いたようだなと新たな気付きもありました。

 

 


サイズも価格も購入しやすいシリーズなので可愛い子から掬われていくという意味合いも展示に含ませることができたように思います。


これら最新作と個展テーマに合う過去作を選抜し、ようやく今回の展示作品21つが決まりました。

 

こちらの 『天の川[アルフェラッツ]』 は2013年制作の天の川シリーズで一番大きな作品です。

実はこれまで金魚の頭が上向きなのが正位置だったのですが、搬入時にこれは逆にした方がいいと直感で決めて天地を逆にして展示しました。最後に展示してから3年間寝かして作品の新たな魅力を発見できたような気持ちでした。今後はこの向きを正位置にするか考え中です。

 

他にも関西では殆ど展示していなかった2008年頃の水彩ドローイングなども今回の個展の大事な一部になってくれたのが嬉しかったです。

『head』 紙に水彩 20cm×24cm 2008            『face』 紙に水彩 19cm×20cm  2008

 



個展へは京都造形芸術大学修士課程に在学中、学内で賞を頂いた当時の学長千住博先生からお花を頂きました。そして昨年かがわ・山なみ芸術 綾川エリアに参加した際大変お世話になった香川の皆さんからもお花を頂きました。

 

 

 



さらに香川の皆さんははるばる個展会場まで観に来てくださりました。とても嬉しかったです。

この日は壁画を描いた喫茶リーフのお母さんから譲り受けた浴衣をご本人の前で着たかったので赤襦袢を重ねて着物風に着ていました。

 


他にも沢山の方がお忙しい中観に来てくださりました。やはり人に観てもらうこと、さらに作品を良いと言ってもらえることでそれまでの大変だった制作や準備も報われたように思えますし、またこれからも頑張ろうと思えます。

 

4年振りに個展をして、やはり京都は優しくて厳しい場所で、自分にとって特別な場所なのだなと思いました。

この様な貴重な機会をくださったギャラリー恵風さんへは感謝の気持ちでいっぱいです。

ギャラリーオーナーから差し入れて頂いた向かいのお茶屋さんのソフトクリーム。


 

これからも描きたいものを 描きたいように 描いていきたいと思います。

どうもありがとうございました。

 

 

 

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