壁画制作40日目は歌いながらでも誤魔化せないくらいの疲労の蓄積と焦りでどんどん視界と気持ちが狭くなってきていたが、一緒に滞在しているアーティストの声掛けですっと開けた気がして何とか持ち堪える。

 

 

 

 

41日目も向かいの道路から全体を眺め気になる部分を修正し、また向かいの道路まで歩いて気になる部分を探す作業の繰り返し。

雨も降り始めるが作業継続。

 

 

 

 

 

 

リーフのママさんが作業しながら食べてねとお昼を持ってきてくださり、頑張ろうと励まされる。

 

 

壁画は完成後出来る限り乾燥させてから紫外線や雨風から保護する為の透明コート剤を全体に塗らなければならない。凹凸のあるコンクリート壁面に均一にハケで塗り込むのは結構な時間と労力がいる。
そしてコート剤を塗り終えてから遂に足場を解体し、初めて壁画の全体を観ることになる。足場を外したら上部の加筆や修正は2度とできない。

 

芸術祭がスタートする4/29の午前中には必ず足場が撤去された状態で公開しなければならない。

ギリギリまで制作するため、28日の夜までに足場がないと届かない部分の制作を全て終え、地上から届く範囲のコート剤塗りなどは芸術祭がスタートしてから公開制作という形で行うことにする。

そう決めるとほんの少し気持ちに余裕が出来るが、芸術祭スタートと同時に公開できるクオリティにできるまで時間との戦いであることに変わりはない。

 

壁画制作始め頃は遠巻きに監視していた猫達も気付けば足場の上まで登ってくるように。

 

 

 

この日の夜喫茶リーフの皆さんが夜間壁画をライトアップするために投光器を取り付けてくださる。とても嬉しい。

暗闇に浮かび上がる壁画はまた違った印象で、早く足場を外して照らしたいと前向きな気持ちになる。

 

 

 

42日目、芸術祭スタート前日。出来る限り早起きをして制作を始める。他のアーティストや運営の人達もバタバタとせわしない空気の中、自分は目の前の絵を描き上げることに集中する。この日も小雨が降り続ける。

 

どこをどのように書き足したかあまり覚えていないけど、気付けば段々日が落ち始め暗くなっていた。

 

 

 

 

気力を振り絞り、中心の黒い幹の部分にサインと日付けを入れる。

 

 

 

もう今からコート剤を塗り始める気力は残っていないので、明日夜明けと共に一気に塗り上げて、町の皆さんに午前中に足場を解体して頂くことにした。

私のいたらなさで足場解体の日程が何度も変わってしまいとても申し訳ないが、皆さん嫌な顔一つせず引き受けてくださる。

この日は夜に芸術祭の前夜祭もあり、いよいよ始めるのかという感慨深さがあったが、それよりも明日トラブルなく無事コート剤を塗り足場を外して壁画の完成形を公開できるかで頭がいっぱいだった。

 

 

43日目 4/29 朝6時頃に足場上部からコート剤を塗る作業を始める。コンクリート面は絵の具を塗った後も凸凹していて、ハケを強く擦り当ててコート剤を均一に広げていかないといけない。そして透明なので塗り残しがないかも分かりにくい。

とにかく早く、念入りに、そして足場から落ちない様集中する。

壁面の半分を塗り終えたところで足場を解体してくださる町の方が到着される。まだ約束した時間より早いが待たせるのも悪いので、すでに塗り終えた上部の足場から順次解体し初めてもらうことにする。

 

 

解体の手捌きはとても鮮やかであっと言う間に足場が外されていく。

 

当初は描く予定のなかった壁画側面の壁の一部にも芸術祭開催中に公開制作という形で少し描くことにしたので、一部の足場だけ残してあっと言う間に約2ヶ月間ビクともしなかった頑丈な足場が撤去された。
足場がなくなり、初めて何も遮らない状態の壁面を観る。

 

 

 

朝日に照らされた壁画は一層存在感を増して棚田の景色の中にそびえ立っていた。

 

 

地面付近の花の細部などまだ少しこっそり仕上げたいところもあり、ここで完全に筆を置き完成という訳にはできなかったのが少し悔しいけれど、ひとまずの “完成公開”の状態まで辿り付くことができた。

 

あまり感慨に浸る時間はなく、芸術祭の開会式に出る準備をするため宿舎へ戻る。

翌日からも公開制作という形で地面近くの壁面の気になる所に手を加えていき、ゴールデンウィーク中に横の壁面も新たな壁画を制作する予定。

 

 

開会式が終わって一息ついてから、さっそく公開制作を開始。芸術祭を観に来た人が途切れなく壁画の前で足を止めてくださるので、壁画のコンセプトを簡単に説明しながら日没まで作業をする。

 

 

 

 

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